連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.28
演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第28弾は谷佳樹さんの魅力に迫ります。
音楽劇「金色のコルダ Blue♪Sky」シリーズ、舞台「文豪とアルケミスト」シリーズなどに出演してきた谷さん。演劇に対する実直な姿勢は業界随一だと吉谷さんは評します。
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谷佳樹について
「こだわりの強い真面目な青年」
それが初めて出会った時の彼の印象だ。
彼はとにかく諦めない。自分が納得いくまで役を煮詰めようとする。納得出来なければとことん疑問を思い続けて、悩みながら答えを導き出そうとする。
その持続力と精神力は見事で、答えに到達する為に努力する姿の清廉さは、スポーツ青年である彼の特性からくるものであると思う。
それに加え、心の作り方を学んだ彼は、演劇青年としての力を育んだ。彼を表する言葉を並べると、まっすぐな言葉使いに自然となっていくような気がする。それほど、谷くんは実直な性格のナイスガイなのである。
このコラム自体もその実直さに引きずられ、気持ちの良い文章を目指せたらいいなと思う。
初めて出会ってから数年。その後現場で何度かお会いした中で彼は、着実に成長を遂げていた。
個々の作品の中でのこだわりだけでなく、仕事として俳優としての向き合い方にもこだわっているが故の結果だろうと思う。
また、諦めることを知らない姿勢だけでなく、役の煮詰め方もとても上手になっていた。安易な方法で答えの導きを行うわけではなく、努力を怠らない強さが依然として残っている。
それは谷くんの大きな武器なのだ。
人柄として飄々としている部分はどこにも見当たらない。谷くんは真正直でストレートな混じりっけなしの純粋な男だ。彼が演じるキャラクターにもそれが現れている。実直で嫌味のない個性は多くの観客から好感を持たれるだろう。
一つだけ、僕はずっと彼を誤解していたことがある。
彼はとにかくずっと動いて、役を体に染み付けながら努力をし続けるタイプかと思っていた。そうではなく分析に分析を重ねるとても理知的なタイプの男だったのだ。その分析により作られた役に、自分の中の違和感がつぶれるまで細部にこだわり続ける。
初めて出会った時の役では、彼はその作品の中でも高い印象を残すハイライトの中心にいた。彼と一緒にこだわって作った汗の滴る稽古場は今だに忘れない。
また、何か別の作品を見て純粋に喜べるのも彼の良さだと思った。素直であり子供のような彼は、舞台の上でもその魅力がいかんなく醸し出ている。
大袈裟でなく、この界隈で実直さ随一の俳優であると僕は思う。彼の発する凛としたセリフを聞かせてもらい、また僕自身も奮い立たせてもらいたい。
そんなことを思わせてくれる俳優、それが谷佳樹だ。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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