連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.27
演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第27弾は仲田博喜さんの魅力に迫ります。
舞台「戦国無双」〜四国遠征の章〜、ミュージカル「Code:Realize ~創世の姫君~」などに出演してきた仲田さん。端正な顔立ちから抱くイメージとは程遠い情熱と職人のような気質を持っていると吉谷さんは言います。
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仲田博喜について
何年か前、彼がまだ舞台を主なフィールドにしていなかった頃、初めて彼と出会った。その頃の彼はステージに立つことを強く求めていて、私にもその情熱を語ってくれた。
その時気づいたのが、王子様のような端正な顔立ちでクールかつチャーミングな印象もあった彼の心の内は、そのイメージからは想像しづらい程、燃えたぎる情熱に溢れているということだった。ここで私の中での彼の第一印象が変わった。
舞台の上での彼の心の内は見えないが燃えたぎるエネルギーを放出させているように感じる。写真などで見る彼の印象とは違う。舞台に立つとその心の内のエネルギーを感じるのだ。
もちろん人は情熱がないよりもある方がいいに決まっている。しかし、表立って溢れんばかりの情熱が見えることが必ずしも良いとは限らない。クールな役柄はなかなかできないかもしれない。
だが、心を作り上げる俳優という職業にとって、心に秘めるエネルギーを感じることは、それだけで本質的な才能になり得る。仲田くんはそんなことを感じさせてくれる。
また俳優という仕事は、ギャップが魅力につながることが多くある。物語も演技も演出も俳優も意外性が重要である。わかりきったイメージのまま、わかりきった展開でことが進んでも、観客をずっと惹きつけていられない。
シュッとした印象にどこか内在するあどけなさ、大人のようで子供のようなそんな魅力。つかみどころがないと言えばそれまでかもしれないが、人によって印象の違う彼は大きな魅力があり大きな武器を持っている。
さらに僕は、彼にどこか職人を感じたことがある。
仲田くんは実に堅実に役へと近づいていく。真面目な性格でとても勤勉な男だ。何度も自分の演技について繰り返し疑問を持ちながら進んでいく。自分の与えられた役割を考え、世界観へと潜ってきてくれる。端正な顔立ちだから、泥臭い部分を感じないかと思いきや、やはりそこも熱い心が武器となる。
和物が似合うかと思いきや、洋物だって似合うだろう。内面を見れば熱い人にも見えるし、ビジュアルを見れば冷徹にも見える。明快でいてつかみどころがない。ショーアップされたものも伝統的な舞台も似合う。コメディが似合うように見えて、まったく笑みすらないダークヒーローも似合うだろう。なんとも不思議な俳優である。
なのに不思議だと思われていない気がする。それがまた不思議な魅力だ。だからこそ、その劇世界の中で何色にも染まることが出来るのだ。
彼とは舞台「戦国無双」、ミュージカル「Code:Realize」で再会した。一方は端正で、一方は温和、正反対な役どころだったけど、どちらも仲田くんの魅力が詰まっていた。
つまり演出家にとって、こうなってほしいと願い求めことが出来るのだ。
それを応えてくれる俳優、それが仲田くんである。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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