コラム

上田堪大、いかなる役でも完成に導く固有の雰囲気【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

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連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.25

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第25弾は上田堪大さんの魅力に迫ります。

音楽劇「金色のコルダ Blue♪Sky」シリーズ、LIVE THEATER『Royal Scandal〜秘恋の歌姫〜』などに出演してきた上田さん。彼の醸し出す雰囲気はどのようなキャラクターにも適する不思議な魅力があると吉谷さんは言います。

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上田堪大について


声のニュアンスや間、イントネーションやアクセント、身体の使い方や癖、キャラクターを演じる上で大切な要素はたくさんあるが、そのキャラクターの持つ雰囲気や空気感を醸し出せるかが最後には物を言う。いや、最初に物を言う程大事なことかもしれない。

それでも、それらは簡単に身につけられるものではない。もともと個人が素養として持ち合わせていないとなかなか出すことはできず、先天的に身につけられた要因も大きいと思う。

彼の持つ雰囲気や空気感は初めての出会いからどこか不思議で只者でないものを感じた。

スッとした容姿でクールな雰囲気と思えば、情熱的で感情的である。勇ましい感じかと思いきや人懐こい空気感もある。どこか危なっかしさも感じさせながら頼り甲斐がある。

彼のもともと持ち合わせていた空気感はどんなものなのだろう。俳優をする前の生き方はどんなものだったんだろう。

爽やかに汗を流す体育会系とも思えるし、理知的な文学青年の雰囲気も醸し出す。それこそ彼自身が台本や登場人物の分析を行い、身体表現を行う俳優という職業にはもってこいのキャラクターである。

見ていると役を演じている彼の素性を深く知りたいと思うが、雰囲気や空気感という視覚化出来ないものに包まれている為に、つかみどころのない魅力を見せられるというわけだ。そうして彼のことを不思議な魅力を持つ俳優と表すことが出来る。

端正な顔立ちの育ちの良い王子様か。
粗野で攻撃的な無法者か。
空虚でドライな科学者か。
何を考えているかわからない孤独なピエロか。

どんな役でもそれにぴったりと合った雰囲気を纏うことが出来る。その本性は気のいい近所のお兄ちゃんかも知れない。仕事をご一緒した時は、大人っぽい艶のある役柄と暴力的で高圧的な悪役、正反対の役だった。

スタイルの良い彼が衣装を纏い、さらにもう一枚、彼特有の雰囲気というベールを纏うことで、そのキャラクターが完成される。

努力家で負けず嫌いな性格の彼は、いい意味でのぶつかり合いを行えるのだが、創作現場ではそのプロセスがとても重要で、作品にとって大きな力となる。かつて幾度となく助けられた。

また、パフォーマーとして一本の芯を通すことに一役買っているのが、彼の凛とした声である。

彼の大きな武器である通りの良い声は、彼の生きる場所として、主戦場として、舞台を選ぶ。それはもはや自然の摂理とも言えるだろう。

漂う雰囲気に凛とした声は、まるで木々生い茂る森の朝、神々しい空気の中を駆け抜ける一羽の鳥の声。

そんな不思議な形容をしてしまう俳優。それが上田堪大である。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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