コラム

櫻井圭登、“変身前”の素朴さに見出す真の魅力【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.22

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第22弾は櫻井圭登さんの魅力に迫ります。

ミュージカル「スタミュ」シリーズ、舞台「RE:VOLVER」などに出演してきた櫻井さん。吉谷さんは、舞台に立つと変身ヒーローのように化けると評する一方、彼の普段の素朴さにさらなる可能性を見出していると言います。

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櫻井圭登について


個人のコラムで以前、櫻井圭登は「演じる」というより「変身する」という不思議な感覚を抱かせる俳優と表したことがある。

とても内気で頼りなさげな少年は、キャラクターが憑依しステージの上で化ける。その姿はまるで少年漫画の設定みたいな俳優である、と。

他の舞台を見ていても、そう言い表す気持ちは今も変わってなく、彼はその変身能力によって魅力的なパフォーマンスを行なっている。圭登が様々な役を演じられるのは、その変身能力の高さによるものだ。彼はそうして今も活躍していることだろう。

そこにはダンスやアクションで培った身体能力の高さが生かされ、小柄な身体ではあるが、大きなパフォーマンスを見せてくれる。知り合いの演出家に彼を紹介した時にも、同じような感想を抱いていた。

そして植田圭輔主演の舞台で、圭輔が「圭登は面白い」と言っていた時も、

「やはり、自分の見立ては間違いじゃない」とニヤリとしたものだ。

しかし、それと同時に僕にある欲求を抱かせた。

圭登のその変身能力を奪ってみたらどうなるんだと。舞台の上で堂々と演じる圭登も魅力的だが、普段の頼りなさげな素朴な彼もまた別の魅力を感じるからだ。

稽古で何かを発見したら、子供のような純粋なリアクションをし、休憩ではほっこりするリアクションを見せてくれる。その時の素朴な表情は変身ヒーローとは真逆のものである。

その表情がとても魅力的なのだ。

僕のオリジナル公演「RE:CLAIM」で主役だった彼に毎日、冗談半分、本気半分に言っていた。「俺はこの作品を通して圭登のファンに、圭登の持つ素朴さがいかに魅力的かを伝えたい」と。

彼は笑いながら「やめてください」と言っていたが、その公演もコロナの影響で中止となり幻となってしまったので、伝える術がなくなってしまった。

だが僕はまだ諦めない。こうして2.5ジゲン!!様のおかげでコラムにより言葉で伝える機会を僕は得た。

圭登の真の魅力は、変身能力を封印し、丸裸(衣装を着ないという意味じゃなく)にした状態で舞台に立った時にこそ見つけられるのではないかと思う。

彼はそのような環境の舞台で覚醒する。

変身という頼りどころを失ったヒーローが、本気で自分と向き合い危機を乗り越える。そのような物語が想像出来る。

演じ手とは追い詰められ崖っぷちに立たされた時に、本当の姿が見えるものだから。ぐちゃぐちゃになった心が彼の真の魅力を引き出すトリガーになるに違いない。そんな姿を見てみたい。

圭登を語ると彼が俳優の理想像であるように思えてくる。変身能力と普段の素朴さ、そこに崖っぷちの状況が加われば、恐るべきパフォーマーになる。

そんな予感がする。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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