コラム

和田雅成、“無邪気で真面目”という最強の能力【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

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連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.17

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第17弾は和田雅成さんの魅力に迫ります。

舞台「戦国無双」シリーズやドラマ&舞台化プロジェクト「KING OF DANCE」などに出演してきた和田さん。目の輝きが印象的だったという出会いを回顧しながら、和田さんが持つ俳優としての重要な武器について指摘します。

* * *

和田雅成について


彼を初めて見たのはある小劇場だった。もともと仕事の都合で、そのお芝居を拝見するスケジュールがなかったのだが、なんとなく気になって、たとえ遅れてでもと劇場に向かった。

劇場の扉を開けすぐに目に飛び込んで来たのは、和田くんのとても綺麗な顔立ちと、特に気になったのは目の輝き。とても印象的な俳優だと思った。

普段はどんな感じかと思いながら楽屋で挨拶をさせてもらったら、懐かしい関西弁の乗りのいい無邪気な男で、表の顔も裏の顔もなかなか魅力的な男やなと思い「ぜひ今度、舞台のオーディションに来てもらえないか」と打診した。

それが舞台「戦国無双」。俳優・和田雅成と初めてお仕事をさせてもらった作品だ。

奇しくも彼が射止めた役は目の周りしか見えない頭巾をかぶっており、僕の中で彼の目の輝きの印象は更に強いものへとなっていった。

実際に現場で感じたのは、身体能力の高さと真面目できめ細かいセンスのある演技と共に、無邪気で現場を明るくさせる気さくな人柄だった。

無邪気で真面目という特性は、俳優にとって最強の能力になり得る。

「舞台に立っている時は、常に子供のように無邪気にいなさい」

ロシアの演技メソッドである『スタニスラフスキーシステム』で学んだ教えだ。俳優はそういう意識でいることで、相手の行動や状況や感情などに色々な発見ができ、その発見に対して無邪気に驚くことで自分の心を開くことができるのである。

そんな俳優の演技は魅力的でリアルな表情と感情を生み出すことが出来る。

また真面目な性格というのは、台本分析やダンスや歌などの表現手法への能力向上において、重要なファクターであることは言うまでもない。

このように和田雅成は、俳優にとって重要な武器を持ち合わせているのだ。

それは彼が柔軟で器用であるという性質も関係している。

人間関係の構築においてもその能力は発揮されて、たとえ立場が上の人間であろうと清々しいほど間髪を入れずに「ゼロカウント・ツッコミ」を行うも全く嫌味を感じない。そして常にニュートラルにいる彼の姿は、結果的に演技に無駄を感じさせない。だから常に見ていられる。

更に関西出身の彼が持つサービス精神の高さは、ファンにとって彼を唯一無二である存在にさせているだろう。ファンは良質な演技を感じることが出来ると共にエンターテインメント性を楽しめるのだ。

和田くん、少々褒めすぎかな? でも同郷で面白くて大好きな奴だからいいか(笑)。

「KING OF DANCE」で再会した時、強くそう思った。いい出会いだった。あの日劇場に赴こうと思った直感は間違えてはいなかったと思う。

でも彼に関して一つだけ不可解なことがある。彼のネット番組は「りんりんのたこ焼き屋さん」という。彼がりんりんと呼ばれていることを現場で聞いたこともないし、おそらくたこ焼き屋でもない。

ずっとどういう意図なんやろうと思い続けている。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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