連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.14
演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第14弾は高野洸さんの魅力に迫ります。
ミュージカル「スタミュ」シリーズ、ドラマ&舞台化プロジェクト「KING OF DANCE」などに出演してきた高野さん。“歌って踊れるイケメン”という評価以上に特筆すべき本質があると吉谷さんは言います。
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高野洸について
ビジュアルが良くタレント性が抜群で、そこに歌えて踊れるというパフォーマンス能力が加わる。さらに若くて生命エネルギーに満ちている。
それに加え、子供の頃から芸能活動を行ってきた彼は経験も豊富だ。経験を生かした度胸もあるし、生半可な障害では動じない。
キャラクターも限定されることなく限りなく無色。彼は表現という場で様々な役割を担ってくれる。魅力と能力が備わるパフォーマンスは観客に絶大な興奮を生ませることが出来る。
高野洸というパフォーマーは将来的にも大きく飛べる力を持っている。
しかし彼は、その力を表立って目立せることはしていないように感じる時もあった。
出会った頃の彼からはギラギラした欲のようなものを感じることはなく、稽古でもその空間の色に染まっていたように思えた。若さから来る荒さのようなものを感じたことがなかった。それは玉にキズかと思ったが、真実は違った。
彼は佇まいやパフォーマンスにおいて徹底的にスマートなのだ。
例え演出として見せ方を歪にしたとしても、スタイリッシュじゃないことはやらない。いや、高野君の体を通した表現ではそういう見え方にはならない。だからこそこちらも安心してハードルの高い要望を出せる。僕はそれに気付くことが出来た。
それらは、彼の内側にあるパフォーマーとしてのプライドが関係していると思う。
プライドの高さという言葉はネガティヴに捉えられがちだが、本質はそうじゃない。そもそもプライドを高く持っていないと、この世界では戦っていけない。
個人の持つプライドが共演者やスタッフとの人間関係の中、物作りにまで影響した時に初めてそれがマイナスに働くのだ。
しかし高野くんにはそれを感じない。いつも屈託のない笑顔で現場にいる。礼儀も正しい。
彼のタレント性の中に大きく秘められたこだわりこそが、彼の持つ魅力にもう一つの要素を加えているのではないだろうか。そして僕は、そこに彼の芸術的観点を見ることが出来た。
「歌って踊れるイケメン」
そんな評価は彼の本質を見えなくさせるような気がする。
彼の内面にある器の中で長い時間研鑽させ続けているアーティスト性。そういった部分こそ高野くんの最大の魅力だと僕は思う。
若くてまだまだ成長段階。こんな魅力的な逸材を近くで見られて幸福だ。彼は今後も大きく羽ばたいて行くことだろう。
歌、ダンス、芝居、ビジュアル、スタイル…マルチタスクが求められる現代にあって、様々な可能性を感じるパフォーマー、それが高野洸だ。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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