連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.13
演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第13弾は安里勇哉さんの魅力に迫ります。
歌劇「明治東亰恋伽」、ミュージカル「王室教師ハイネ」シリーズ、「ミュージカル封神演義」シリーズ、「地縛少年花子くん-The Musical-」などに出演してきた安里さん。優しい演技と振る舞いの彼は表現の場に不可欠な存在だと、吉谷さんは指摘します。
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安里勇哉について
初対面はなんとも不思議な性質を持つ男だな、と思った。
人懐っこく人との距離の縮め方が上手い。それは俳優仲間に限ったことじゃなくスタッフにもそうだ。屈託のない笑顔で近づいて来て冗談を飛ばしてくる。ただの天然な男かと思いきや、周りを洞察し全体の空気や作品を理解し、適切なアドバイスをしてくれて、演出家にもこうじゃないかと提言もしてくれる。それが安里勇哉だ。
安里くんが現場にいてくれると理想の物作りが出来る。
俳優は自分の体や心を使って表現するものなので、その人の本質が見えてくるのは当然である。彼の演技には常に心の優しさが内在していて、特にそのような役回りでは絶大なる安心感を与えてくれる。
また歌やダンスにしても、声やフィジカルバランスがよくパフォーマンス力が高い。そこに加えて嫌味のない自然な演技が彼の持ち味。聞き苦しい台詞や見苦しい動きは何一つない。彼がいるとその役の表現の幅が広がるし、彼の表現は観客を温かく迎え入れているようだ。
僕が演出をつけている舞台でも、安里くんの演技に見入る時がある。
優しく吐露する台詞や歌声が好きだ。きっと彼のパフォーマンスには心の浄化作用があるのだと思う。
声紋分析をしたらきっとそのような数値が出るに違いない。(専門的な方、誰か調べてみてください)
また前述したように、彼は周りを観察する力に長けていて、それはトーク番組にも生かされる。過去に僕も何度かトーク番組でご一緒させてもらったが、周りを観察しながら的確なタイミングでゲストに話を振る。
自分を主張しすぎることがない。そんな立ち居振る舞いを見ても、使命感に追われたり焦ることがないように感じる男だ。
沖縄出身者の朗らかな人柄の特性を最大限に生かしていると思う。
そんな彼の俳優としての一番のモットーは目の前の人を喜ばせることなのだろう。彼の思う俳優としての最大の報酬は共演者やスタッフ、観客の笑顔なのだ。
星や運命の巡り合わせの中、きっとそういう天命の下にいるに違いない。(専門的な方、誰か調べてみてください)
ネット検索してみると、好きな食べ物は甘口のカレーやシナモントースト。得意料理はだし巻き玉子とオムライス。それに猫舌。子供や動物が大好きで、ホラーや虫が苦手らしい。
優しいイメージのまんまやないか。
優しい男というのは、周りを観察し他の俳優や作品を立たせてくれる。
俳優にとって大切な性格を持つ安里くんは表現の場に必要不可欠な存在だ。
これからも人柄が滲み出る、そんなパフォーマンスを期待したい。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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