コラム

碕理人、視聴覚に訴えかける“ゆらぎ”の声と第一印象【演出家・吉谷光太郎 連載コラム】

連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.10

演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第10弾は碕理人さんの魅力に迫ります。

吉谷さん演出の音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」シリーズ、ミュージカル「ハートの国のアリス」などに出演してきた碕さん。人を魅了する声と姿勢、そして第一印象について取り上げます。

* * *

碕理人について


ピンと張った背筋、ナイススタイルで高身長、凛とした声、鋭い瞳の奥にある温かみ、クシャッと笑う笑顔。初めて目にした時、これが世に言う王子様系かと思った。

「彼の名は?」

無性に気になって調べた。最初名前の読み方が分からなかったけど判明。それが碕理人(さきまさと)、さきくんだ。

無性に気になった時点で僕は彼に魅了されている。

王子様系のことが気になるとは、まさか自分の中に乙女心があるとでもいうのか!? いやいや、俳優としての魅力に演出家として反応したのだ。

彼の持つ特徴の中で最大の武器は声と姿勢ではないかと思う。

この二つには大きな因果関係がある。

真っ直ぐに気管を通って吐き出される息と共に声帯を震わせて飛び出す音は、真っ直ぐに音色が吹き出す管楽器のように響き心地よく耳に届く。その音はとても正確で美しい。

一方、揺れ動いた感情の際にさきくんから発せられる声は、「1/f(f分の1)ゆらぎ」を感じさせるものがある。僕はそう思う。

(「ゆらぎ」とは不規則な動きのことで、波の音や木の葉が風で揺れる音、鳥の鳴き声など、人間が「心地良い」と感じる音には、「1/f(f分の1)ゆらぎ」という超音波が関係している)

だからこそ感情を揺れ動かしたくなる、そんな役をやって欲しくなる。繊細な心情を吐露するものでも、感情を大きく変化させるものでも、彼の口からどんな声が出るのだろうかとワクワクする。

さきくんはそんなことを感じさせてくれる俳優だ。役と真摯に向き合う姿勢もまた、それに拍車をかける。

心理学で「メラビアンの法則」という言葉がある。別名「7-38-55ルール」というものだ。情報を発信し、それが相手に与える影響の比率は、言語そのものが7%、聴覚におけるものが38%、視覚が55%ということらしい。

これは演劇における観客との関係にも通じるところがあると思う。

つまり観客の心に訴えかけるのは、台詞の情報そのものよりも、声や表情、行動が9割以上だということである。(このことを理解出来ている俳優はより良いパフォーマンスを行える)

「メラビアンの法則」を人間関係の話に戻せば、つまり第一印象が大事だということだ。

初めてさきくんと出会ったあの頃の僕も、彼の第一印象に魅了されたのだろう。そして今回、さきくんのコラムを書くにあたって法則や心理学を学ぶ機会を得られることとなった。

王子様とはかくも人に与える影響力が大きいものだ。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

このライターが書いた他の記事も読む