連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.9
演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第9弾は高崎翔太さんの魅力に迫ります。
音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」シリーズの出演に加え、視聴者参加型の配信トーク番組「キカクのタネ」から誕生した舞台「GRIMM」で主演を務めた高崎さん。舞台上でも稽古場でも、いくつもの役割を担い、また、その笑顔を伝播させると吉谷さんは言います。
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高崎翔太について
俳優がいくら感情を込めた演技をしても、いくら視覚的に面白い表現をしても、リズムよくストーリーが進んでいかないと観客の皆様に気持ちよく観劇して頂けない。お笑いと同じく「間」の取り方で面白さが大きく変わるのだ。
間の取り方が非常に秀逸で、観ていて気持ちのいい作品を目指す上で絶対的な信頼を置ける俳優が高崎翔太だ。
特に現代は情報量が多くスピード感のある物語が多い。しかし、ただ単にスピードが早いだけでは情報は川のように流れていくだけだ。
笑いも、必要な伏線を伝えることも、回収も、全て「間」の取り方で持たせられる印象が変わる。
高崎くんが持ち合わせるリズム感、その根底にあるものは何か。彼の貫通する信念に関わっているのだと思う。
それは何より、観客に喜んでもらうことではないだろうか。
高崎くんのまるで天から降り注ぐ光のゴンドラに乗って舞い降りた天使のような笑顔。そんな素敵な笑顔を観客にも作ってもらいたいのではないだろうか。ステージと観客席をつなぐ、その光景はまるで幸せの合わせ鏡だ。
綺麗な顔立ちで、少年のような笑顔で自虐ネタを平気で放り込んで来るのも観客に喜んでもらう為だ。
そんな高崎くんの魅力はビジュアルとのギャップにもあるだろう。
ビジュアルも雰囲気もまるで人懐っこい少年、中身は芯の通ったサービス精神旺盛な大人の俳優。フィジカルバランスもいい。かわいらしい役からかっこいい役、真面目な役からコメディリリーフもこなす。
そして与えられた役以上に現場での影響力が大きい。
いつも模範となるべき姿勢でいてくれる。稽古もとても楽しそうにする。かといって、厳しさがないわけでもない。それは俳優としての佇まいの理想である。
その雰囲気は現場にも伝わる。現場の雰囲気というものは物作りにとても重要で、彼のような存在がいるととても助かるのだ。
彼はそういった意味でもバランスがよく、リーダーにもなり得るしサポートにもムードメーカーにもなり得る。まじめになりすぎず人に緊張感を与えすぎない。
本番でも稽古場でも、どんなポジションでも守れるユーティリティプレイヤーぶりは俳優としての役割の広さに直結する。
多くの役を担ってくれて、さらに現場での力にもなってくれる。舞台製作を下支えしてくれることが本当に心強い。頼りになり、さらにその笑顔に癒やされる。
僕もファンの皆様と同じく彼の笑顔に癒やされている一人だ。
癒やされ具合を例えるなら温泉。
そう、高崎翔太の“効能”は温泉レベルだ。
これからも心温まる演技を、またその真逆のクッと引き締める冷水を浴びたようなクールな演技を今後も期待したい。
高崎天然温泉、本日も営業中。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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