コラム

良知真次、多角的視点の根底に“観客への愛”【演出家・吉谷光太郎 連載コラム】

広告

広告

連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.8

演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第8弾は良知真次さんの魅力に迫ります。

吉谷さんが手掛けた超歌劇『幕末Rock』、ミュージカル「Code:Realize ~創世の姫君~」でともに主演するなど俳優としてはもちろん、歌手、振付、演出といった多岐にわたる活動に加え、株式会社World Codeの代表取締役を務める良知さん。彼の並外れた視野の広さがもたらすエンターテインメント性ついて取り上げます。

* * *

良知真次について


自分が役に近づくか、役を自分に近づけるか、俳優の性質を表すのに何度となく語られる二択。その二択の中で良知くんは後者であると感じるが、その方法が実にダイナミックだ。まるで作品世界と観客席を含めたエンターテインメント世界を丸ごと自身の手で引き寄せているかのようだ。

その世界で燦然と輝くのがエンターテイナー・良知真次であり、彼がそのような存在になれるのは多角的に物事を見る視野の広さにあるだろう。

俳優として良知くんのプライドの先には常に観客への意識がある。

それは単に一個人のサービス精神と言うわけではない。観客の視線の先にある自身のパフォーマンスが作品世界にどのような華を添えられるか。そのサプライズは観客を興奮させられるか。ラストのカーテンコールに至るまで、観客が劇場を出るまで、どのような気持ちでいて欲しいか。俳優としての意識を超えて、さらに先を目指しているように思う。

それはプロデューサーの視点であり、演出家の視点でもある。

そうやってエンターテインメントに従事する責任を彼は人一倍捉えている。

しかし常に観客への意識を開かせながら、自身のパフォーマンスを磨くのは容易なことではない。広い世界へと繋がられたイマジネーションを自身の体に落とし込みステージで表現する。それがエンターテイメントが芸術活動である所以である。

そこにはものすごいエネルギーを放出させる必要がある。

そして、そこへ向かう栄養素は観客への大きな愛情である。

映画『グレイテスト・ショーマン』で主人公・バーナムが「最も崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」と語っている。良知くんの作品世界を越えたイマジネーションの先にも観客の笑顔があるのだろう。

ミュージカルの現場で、良知くんからメインテーマ曲の1フレーズをアカペラで入れたいと提案されたことがある。

それは主人公とヒロインの心が結ばれる非常に重要な局面だ。

その時、メインテーマ曲の1フレーズを観客の耳に飛ばすことで、そのシーンの崇高さが無意識的に引き上げられる。加えてクライマックスでメインテーマ曲がかかる感動を増幅させるのだ。恐れ入った。さすがだと思った。

ジャニーズや劇団四季のプレイヤー、そして宝塚の振り付けまで経験し、今は実業家でありプロデューサーでもある。

このセンテンスだけをとっても、彼の視野の広さが並外れていることがわかるだろう。

「俳優と無人島に行くなら誰?」という質問がきたら僕は良知くんと答える。(向こうにとっては迷惑)

バイタリティがあり人生経験が豊富。イマジネーションの先、自分の状況を多角的に捉え革新的なアイデアを生み出す。そしてサバイバルな状況をエンターテインメントショーに変えてくれるだろう。

無人島ゆえ無観客なのが残念だ。

いや、World Code(良知くんが代表のエンターテイメント企業)でツアー組んでやりましょう。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

広告

広告

WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

このライターが書いた他の記事も読む