連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.5
演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第5弾は杉江大志さんの魅力に迫ります。
ミュージカル「スタミュ」シリーズで主演を務めたほか、ミュージカル「ヘタリア」シリーズや舞台「文豪とアルケミスト」シリーズなどに出演してきた杉江さん。俳優としての類まれな資質を持つ同時に、“宝探し”をする少年のようだと吉谷さんは言います。
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杉江大志について
「いい」「悪い」を判断できる人。「したい」「したくない」をはっきりと明言出来る人。最良と最高の為に諦めずに仲間や自分と戦える人。何かを常に模索できる人。
SNSの写真を見るといつもキラキラした目とニカっと笑う口。天真爛漫な男の子かと思いきや芯がものすごく強い。
ちょっとやそっとの怪我じゃ舞台から降りることはないだろうし、例え大きく傷ついても、這いつくばって舞台に向かうんじゃないかという精神力。それでいて常に物事を理屈や感覚で考察する聡明な男。
イケメンってだけやないんやで。杉江大志は!(杉江くんの出身が滋賀県なので思わず関西弁)
――俳優は芸術家である。
僕が最近よく稽古場で言う言葉だ。
俳優の皆さんにはそういう自覚を持ってもらいたいと共に、僕自身は敬意を持ってそう接している。ただし俳優は、演出家の意図通りに言葉を出したり動くだけだと芸術家にはなれない。
言葉を発することや動くことそのものは単なる作業だ。そこに意味や意志を乗せることで、一人の人格を作り上げていく。
「内的感情」と言って、俳優自身の記憶や心を復元し、役と同一化させる。そうすることで役というリアルな芸術作品になるのだ。
内的感情と向き合い、常に自問自答できる俳優が杉江大志じゃないかと思う。
それに加えて恵まれた運動能力を持つと共に、知的探究心が旺盛である。
これらのセンテンスだけを取っても俳優にとっての資質が十分なことは窺い知れるだろう。
杉江くんとのやりとりで、
「(演出家に)やれと言われたらやります。でも…」
この三点リーダーの先に、彼の目に重要なものが見えていると感じた。
それを追求した先にきっと、作品がもっと良くなる光があるのだ。彼は常に楽しみながら答えを探そうとしている。答えを見つけた時の興奮となり驚きとなる。
「どの台詞も驚きを持って言う」
僕が最近習った言葉だ。驚くことで相手役、その場や状況からの影響をバイブレーションのように体の内側に感じることが出来る。それにより演技が変わる。
驚きを伴うことは俳優にとって心のアンテナの受信力を強めることだ。
杉江くんはいつもアンテナを広げ、少年のような眼差しで台本という名の宝の地図を頼りに稽古場や劇場で仲間と共に宝物を探している。
この冒険は時には仲間との喧嘩だってあるだろうし、うまくいかないことだってあるだろう。でも、それも含めて冒険なのだ。
杉江くんと一緒の冒険はワクワクする。面白いしエキサイティングだ。
俳優は芸術家である。
杉江大志という俳優は冒険家でもある。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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