連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.4
演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第4弾は橋本祥平さんの魅力に迫ります。
これまで吉谷さんが手掛けてた舞台「雷ヶ丘に雪が降る」、歌劇「明治東亰恋伽」シリーズ、舞台「RE:VOLVER」、「ミュージカル封神演義」シリーズ、「王室教師ハイネ-THE MUSICAL II-」などに出演してきた橋本さん。彼が舞台上で最大限に発揮する“戦闘力”に、舞台俳優の醍醐味があると吉谷さんは言います。
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橋本祥平について
僕が現在、主に活動のフィールドにさせていただいているのは漫画・アニメ原作の舞台なのだが、そこに登場する主人公キャラクターを地でいくような俳優がいる。
それが橋本祥平である。
例えば、一見頼りなさそうな若者が自分の中の勇気を振り絞り、苦難や逆境を乗り越えることで成長していくヒーロー。
例えば、冷徹で大人しそうな若者が感情のトリガーを引いた瞬間に、熱量高く言葉や攻撃を相手に食らわせるダークヒーロー。
例えば、綺麗な顔立ちの上にびっしょりと汗をかき勝利した後、天空にまで突き抜けるような笑顔を見せたり、敗北の後に涙をぐちゃぐちゃにして感情をあらわにするスポーツマンの若者。
そんなイメージを彼は、そのまま俳優という役職の中で体現しているのだ。
主人公の魅力の一つに感情の起伏の大きさがあると思う。
橋本祥平の稽古前は人当たりの良い青年で、現場に流れる緊張感も「がんばりましょ〜」といった感じで取り除いてくれるし、何なら現場に落ちていたゴミも「僕が拾います!」といった感じで取り除いてくれる。
代役に率先して入ってくれる主役なんてそう滅多にいるものではないが、祥平は滅多にいない人物の一人である。
そんな彼が稽古や本番に入るとまるで目に魂が宿り、今までには感じられなかった戦闘力ゲージがグングンと上がる。
本番も間近になると、その上がり方はまるで見ているこちらの『戦闘力測定装置』のゲージが振り切れ壊れるかのようだ!
橋本祥平をキャラクター化するならば、ひとたび舞台上に立てば光(照明のスポットライト)を神々しく浴びて、自身を鼓舞させるような音楽(大爆音の音響)を纏った英雄(俳優)として見参するのだろう。
彼は舞台というフィールド内では最強であり、ギャラリーを魅了させる。
が、舞台を降りると、静かに楽屋でバルーンアートでもやっているかのような普通の青年となる。そして仲間の振りで一生懸命知恵を絞った渾身のギャグが空振りとなり、祥平バルーンアートは静かに萎む。
このように、舞台というフィールドで最大限に変貌することこそが舞台俳優の醍醐味であり、役を演じる上でのエネルギーの振れ幅の大きさが俳優としての矜持を持たせてくれる。
三次元にいる二次元のような俳優、それが橋本祥平だと思う。
最近の活躍をテレビドラマでも拝見する。その眼差しにははっとさせられるものがある。
今後さらに活躍のフィールドを広げ、観劇者や視聴者に『戦闘力測定装置』を壊すほどのエネルギーを放ってもらいたい。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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