連載コラム「吉谷光太郎のマチソワタイム」vol.3
演出家・吉谷光太郎さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第3弾は長江崚行さんの魅力に迫ります。
ミュージカル『ヘタリア』シリーズではイタリア役、『ミュージカル封神演義ー開戦の前奏曲ー』では殷郊役を務めた長江さん。物語をエンターテインメントに昇華させる稀有な俳優の一人だと、吉谷さんはいいます。
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長江崚行について
「歌は台詞のように、台詞は歌のように」。昔から言われている言葉だ。
特にミュージカルに出演した俳優は、稽古場で耳にしたこともある言葉じゃないかと思う。
『自然に言葉が生まれ、あたかも話すように歌う』
『自然にリズムが生まれ、あたかも歌うように話す』
一見簡単そうに見えるが、実現させるには十分な技術が必要だ。
僕の知っている中でこれを実現できる俳優は限られている。
その俳優の一人が長江くんだ。
彼は歌とダンスで培ったリズム感を演技に乗せられる俳優である。
歌はリズムや音程を乱さないことを前提に心情を語らないといけない。普通は心情を乗せれば乗せるほどリズムが遅れがちだ。
しかし彼は、インテンポの中で心情をきちんと乗せてくれる。結果、気持ちのいい心情表現が観客に届く。
台詞も同じように、彼は作品全体のリズム感をキャッチ出来る能力が備わっている。作品全体の中でどのようなリズムで生きるべきか、それを感覚的に捉えているのではないかと思う。
また歌の間奏で台詞を言う時、長江くんは限られた時間の中でセリフに緩急を織り交ぜ、歌につながるリズムで言葉を紡いでくれる。台詞からダンスへの入り方も同じような感覚でパフォーマンスを見せてくれる。
つまり、歌やダンスや演技など、多角的な見せ方をシームレスに表現できるのだ。
演劇は日常のようで非日常な空間を彩るものだから、見せ方もまた多種多様だ。ドラマの中の音楽をまるで衣装の一部のように纏い、味方につけられることが長江くんの最大の武器なんじゃないかと僕は思う。
演劇は観客の心を動かすことが出来ればアートとしての価値を生み出し、そこに楽しみを生み出すことをすればエンターテインメントとなる。
僕はそう捉えているが、演じる上で動きは鮮やかで滑らかな方がいいと思うし、言葉はリズムよく聞きやすい方がいいと思う。
それがエンターテインメントになる力の一つになる。
つまり長江くんは物語をエンターテインメントに変える力を持っているのではないかと思う。
「人を楽しませる為に存在し、人の為に生きている」
長江くんは優しい男なので、その性格もまたエンターテイナーの資質になっている気がする。
個人的に彼は僕の息子のような存在だ。少々、ハードルの高いことも言っておこう。
演技、歌、ダンスを駆使し、表現の垣根を自由に行き来できるエンターテイナー。
それが長江崚行なのだ!!!!
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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