コラム

【エーステ初心者向け】一歩前へ、踏み出す勇気をくれる「冬組」の魅力を解説

MANKAI STAGE『A3!』(通称「エーステ」)入門コラム第4弾は、ついに冬組へ。「家族」の春組、「友達」の夏組、「仲間」の秋組……に続く冬組はどんな特徴を持つ組なのか。

舞台版ならではの注目ポイントとともに、まだこの作品をよく知らないという人に向けてその魅力を解説したい。

雪解けの息吹待ち、静かに燃える冬組

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<冬組>
月岡 紬(演:荒牧慶彦)
高遠 丞(演:北園 涼)
御影 密(演:植田圭輔)
有栖川 誉(演:田中涼星)
雪白 東(演:上田堪大)

冬組はこの5人からはじまる。リーダーの月岡 紬(演:荒牧慶彦)は、とある理由で芝居から離れていた演劇経験者。

高遠 丞(演:北園 涼)はそんな彼とかつてともに板の上に立っていた、劇団いちのいわゆる演劇バカ。もともとはライバル劇団GOD座のスター俳優だったという経歴の持ち主で、入団時点で高い演技力を有している。

演劇経験者が2人も揃う冬組は、技術的に抜きん出た存在感を放つ組といえる。

劇団いちのトリッキーな変わり者の芸術家・有栖川 誉(演:田中涼星)、ミステリアスで美人という言葉が似合う元・添い寝屋の雪白 東(演:上田堪大)。

そして、記憶喪失で寮の前に倒れていたことがきっかけで入団することになった、すぐに寝てしまう謎めいた男・御影 密(演:植田圭輔)。

他の組とは違って学生はおらず、全員が成人か年齢不詳。もっとも大人びた組だ。

実際に歳を重ねてみるとわかることだが、大人になればなるほど、人は素直になれなくなるもの。

胸の内を伝える前に、プライドや後悔、建前、これまで積み重ねてきた過去……そういった“大人の都合”が邪魔をしてしまうのだ。

結成当初の冬組は、この大人だからこその壁がお互いの間に高くそびえている。

2019年上演のMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~は、その壁がちょっと不思議なアクシデントによって壊れていく物語。

お互いに一歩踏み込んで、MANKAIカンパニーが自分のいていい場所なのだと自ら認めていくまでの軌跡が描かれていく。

静かに、だけどじわじわと燃え広がる熱を感じたいという人におすすめしたいのが、この冬組だ。

冬組の魅力① 過去と向き合った先にある“運命”を感じさせてくれるキャスト陣のうまさ

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2.5次元作品や舞台にあまり親しみがないという人でも、冬組キャスト陣の名前には1人くらい見覚えがあるのではないだろうか。

そう思ってしまうほど、まさに盤石のキャスティングとなっているのが冬組のおおきな特徴のひとつだ。

冬組の団員がそれぞれ秘かに抱えているものは、長い年月をかけて降り積もり、踏み固められたものである。

MANKAIカンパニーでの日々、そしてなにより冬組の公演を通して、それらの氷がゆっくりとたしかに溶けていく様子が描かれなければならない。

すでに上演された「秋冬」公演では、たしかに5人の心のなかに沈んでいたものがほんの少しだけ溶け出し、5色が混ざりあった旗揚げ公演「天使を憐れむ歌。」が生まれた。

しかしこれはまだほんの小さな1歩にすぎず、不器用な大人たちがようやく重い足を前に出しただけともいえる。

この先続いていくストーリーのなかで、彼らはさらに小さな1歩を積み重ねていくことになるだろう。

盤石と称したキャスティングは、この心の機微を的確にそして繊細に演じられる布陣なのだ。

先述したように、冬組は大人が集まっている。それも、一癖も二癖もある内情を抱えた大人ばかりだ。

なにか心打たれる出来事があったとしても、それを分かりやすく表に出すようなタイプでもない。

でも、たしかに彼らはなにかを感じて、変わっている。

「エーステ」での冬組の演技を観ていると、この些細な成長の表現の上手さに驚かされる。

視線の使い方や姿勢、指先……。その隅々まで行き渡った、生きた感情を感じられるだろう。

気になるところをとことん凝視できるのが、舞台版の醍醐味でもある。視線や指先など、どこかひとつにポイントを絞って、冒頭からフィナーレまで追ってみるといいだろう。

キャストの力量を感じずにはいられない。まさに、演技の持つ力を「エーステ」を通じて教えてくれるはずだ。

冬組の魅力② 絶妙なバランスで成り立つシリアスとファンタジー

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ネタバレになってしまうので、団員が抱えているものについてはここでは触れない。しかし、それらの根は深く、彼らの心をがんじがらめにしてしまっている。

こう書くと冬組のストーリーはシリアス一辺倒なように感じてしまうかもしれないが、決してそんなことはない。

むしろ、原作のメインストーリー第一部に限っていえば4組中もっともファンタジー色が強い。現実的なMANKAIカンパニーの設定を覆していくような、非現実的な展開が待ち構えている。

このあたりは好みが分かれるところかもしれないが、リアルに人が演じることによって、唐突すぎるファンタジー要素が違和感なく彼らの生活に溶け込んでいくように筆者は感じた。

これは、原作をプレイしているときの「プレイヤー(自分)対ゲーム」という構図に対し、舞台ではストーリーと観客(自分)の間に「役者」が入るからではないかと感じてる。

役者が生み出した舞台のなかのMANKAIカンパニー。それは役者の演技というリアルな質感でつくられたフィクションの空間だ。

少しメタ的な話になってしまうが、そういう舞台という空間だからこそ、冬組の序盤のストーリーに欠かせない摩訶不思議な出来事も、観る者に違和感を与えないのではないだろうか。

筆者にとって「エーステ」の冬組は、原作とはまた違った感覚を与えてくれる、まさに舞台ならではの存在だ。こうして新たな側面を引き出してみせてくれるのも、高いキャスト陣の演技力があってこそなのだろう。

演技の真髄が、芽吹きやがて花開く冬組

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冬は、芽吹きの準備をしている季節である。まだ葉の出ていない木々、芽の出ていない雪の下の草花。しかしそれらは、未来への力を寒空の下で着実に蓄えている。

重い雪をはねのけ、自らの未来へと歩みを進めていく、“再生”という名の運命を共にするのが冬組の魅力ではないだろうか。

あと一歩が踏み出せない。勇気が持てない。そんなとき、再び歩き出すことの大切さを知っている冬組の面々が、そっと寄り添ってくれるだろう。

WRITER

双海 しお
 
								双海 しお
							

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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