春組・夏組と紹介してきたMANKAI STAGE『A3!』(通称「エーステ」)初心者のためのコラム企画第3弾は、秋組を取り上げたいと思う。
実りを象徴する季節・秋を冠する彼らは、どんな魅力を持つのか。さっそく秋組の劇団員たちを見ていこう。
個性がぶつかりあう秋組劇団員
秋組、
ありがとな。
お前らと芝居が出来てよかった。監督さん、
これからもよろしくな。#fujitaray #dustz #エーステ #秋組 #古市左京 pic.twitter.com/79xuWW0s36
— 藤田玲(DUSTZ Ray) (@Ray_FJT) March 24, 2019
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<秋組>
摂津万里(演:水江建太)
兵頭十座(演:中村太郎)
七尾太一(演:赤澤遼太郎)
伏見 臣(演:稲垣成弥)
古市左京(演:藤田 玲)
入団当時高校生の摂津万里・兵頭十座。もともと顔見知りだった2人は、入団後も“因縁”が続いていくことに。
もう1人の高校生・七尾太一は、モテることに余念がないお調子者タイプで、人懐っこい様はまるで子犬のよう。
大学生の伏見臣は、面倒見のいい秋組のおかん的存在。古市左京は、職業ヤクザな劇団最年長(年齢不詳キャラを除く)だ。
未熟でやんちゃ盛り、血気盛んな高校生3人組と、落ち着いた大人2人といったバランスの組である。
原作の立ち絵、エーステのキャラクタービジュアル。どちらを見てもわかるように、秋組はコワモテなメンバーが多く、一見するといかつい。「怖そう」という印象を抱く人もいるかもしれない。
実際に秋組はほかの組に比べてワイルドだ。
とくに入団直後、いやなんなら入団する前の秋組オーディションの時点から、万里と十座は火花を散らし険悪な空気が立ち込める。
2019年上演のMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~公演では、そんな彼らのチグハグなはじまりから、旗揚げ公演を経てひとつの組としてまとまっていくまで。
2020年上演のMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~公演では、芝居に向き合うからこそ生まれた苦悩や、それまでごまかしてやり過ごしてきた綻びが、秋組の前に試練となって現れる。
その試練を糧に、“もっといい芝居”・“高めあえる関係性”という色濃い果実を手に入れていく過程が、ワイルドな秋組らしいダイナミックな劇中劇とともに描かれていく。
秋組の魅力① ポートレートから始まる、それぞれの孤独
エーステ秋組単独公演大千秋楽無事終了致しました。
本日のご来場誠にありがとうございました!
本当に本当にこのメンバーで走りきれてよかった。
沢山の応援、本当にありがとうございました。
この後はお疲れ様生配信!
お楽しみに!! pic.twitter.com/wSsXYj3jlM— 赤澤遼太郎 (@akazawa_taro) March 1, 2020
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秋組のストーリーは原作でも各キャラクターの「ポートレート」が綴られる。このポートレートは、5分の一人芝居で自分自身を演じるというもの。
芝居は、自分ではない誰かを演じること。しかし、その“誰か”を通じて客席まで感情を届けようと思うなら、自分自身への嘘も捨てなくてはならない。なによりもまず自分と向き合って、それをさらけ出すだけの覚悟が必要なのだ。
彼らは心の奥から絞り出し、吐き出すように、その覚悟の塊を言葉にする。
舞台版では、冒頭にこのポートレートの一部が語られる。真っ暗な舞台のうえにポツンと照らされたスポットライトの中心に立つ彼らが、なんとか形にして投げるポートレートの言葉はとても重苦しい。
独白という形のなかに垣間見える彼らの抱える孤独。観客はその意味を、ストーリーを追うなかで理解していくことになる。
劇団員を描く『A3!』だからこその「一人芝居を演じる」という要素。それを役者が目の前で演じて観せてくれるのだからこれほど贅沢なことはない。
実際に劇場で観たポートレートは、原作ストーリーを読んだときに受けた衝撃とはまた違った重さを持って殴りかかってきた。
それぞれのキャラクターを演じた役者が、そのキャラクターに向き合った結晶ともいうべきポートレートのシーンは、エーステ秋組公演を語る上で外せない要素といえるだろう。
秋組の魅力② カッコいい劇中劇と、呼応するようにハードな心の影
「みんなで撮るのは中々難しいッス。。」 pic.twitter.com/4rMWbORDN9
— 赤澤遼太郎 (@akazawa_taro) March 16, 2019
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秋組はアクションを得意としている組だ。
旗揚げ公演の『なんて素敵にピカレスク』ではガンアクション、2作目の『異邦人』ではSFな世界観でのアクション。3作目『任侠伝・流れ者銀二』は任侠もので古市左京の殺陣が光った。
劇中劇ではどうしても駆け足気味になってしまうストーリーのテンポも、アクションなので違和感が少ない。
そして単純に痛快でカッコよく、それでいてみぞおちのあたりが抉られるような感情が押し寄せるのだ。
マフィアもので銃撃戦を繰り広げ、背中を預け合うバディを演じる万里(演:水江建太)と十座(演:中村太郎)。犬猿の仲といえる、顔をあわせば胸ぐらをつかみあうあの2人が……と思うだけで胸が熱くなる。
誰かのために生きたいと心から願うようになるゼロを演じる太一(演:赤澤遼太郎)と、初の主演を任されるなかで過去をまるごと受け入れて自分の道を見つめ直した臣(演:稲垣成弥)。
2人は、決して消えない傷を抱えながらも、秋組はその傷ごと“本当の自分”を受け入れてくれる場所だと気がつくことができた。
自分は歳も離れているし……と自ら線を引いてきた左京(演:藤田 玲)は、初主演をきっかけに、自分がいかにMANKAIカンパニーを愛していて、秋組の劇団員たちに愛されているかを知ることになる。
秋冬公演・秋単独公演を経て、劇中劇と絡めながらこれだけのドラマが描かれていく。
それぞれが抱える過去は決して軽くなく、それゆえに彼らが纏っている心の装備も厳重だ。そう簡単に本音は見せてくれないし、悟らせようとしない。
しかし彼らは芝居を通して、正面衝突を繰り返しながらも互いの鎧を少しずつ崩していく。
その先に観せてくれる彼らのラストの表情。そこに、きっと彼らが得た“実り”を感じることができるだろう。
芝居で結ばれていく男同士の絆が熱く描かれるエーステ秋組
小さくふくらんだばかりの果実が、悪天候や天敵の驚異にさらされながらもたくましく成長していく姿に重なる秋組の劇団員たち。
彼らは演劇という絆でつながった、同志という色合いが強い。家族でもなく友人でもなく、良きライバルであり同志なのだ。
「男同士の絆」そんなキーワードに弱い人こそ、ぜひこの機にエーステの秋組の軌跡を観てもらいたい。そこには、拳と汗と涙で綴られる熱演が待っている。
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