コラム

想いの力強さと雪村千鶴の存在。2つの視点から考える「薄ミュ」の魅力

平成の締めくくりにミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇が上演され、そして新章として令和の時代に生まれたミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇。

残念ながら、本コラム公開前に本作のプロジェクト中止が発表されているが、脈々と受け継がれてきた「薄ミュ」の魅力について改めて考えてみたい。

ひとりでも多くの読者が、「薄ミュ」に興味を持ち、またいつか咲き誇るであろうシリーズ新作を観るきっかけとしてくれたら嬉しく思う。

血の匂い漂う……心抉る重厚なストーリー

これを読んでくれているあなたは、日本史は好きだろうか?

「好き」と答える人なら、「薄ミュ」の史実とファンタジーとが絶妙に絡み合うストーリーは、とくにクセになるのではないかと思う。

「薄ミュ」は、いまさらあえて言う必要もないかもしれないが、新選組を中心に描かれる作品だ。原作のキャラクターデザインは、もちろんジャンルが女性向け恋愛ゲームなので、みな美男子だ。

だが、その美しい顔立ちのキャラクターたちが繰り広げる物語は、いずれも見た目のような“キラキラ”したものではない。

羅刹化という設定もあり、彼らの生き様は実に血なまぐさい。

そして、それを舞台の上で生身の役者が演じることで、観客は劇場に充満する“血の匂い”を感じることになる。

これはもちろん比喩だ。実際に誰も血を流しているわけではない。

しかし、芝居から沸き立つ生の表現は観客の想像力を掻き立て、飛び散る血しぶきや、消えゆく命、弱々しく灯る希望……そんなものをみせてくれる。

命を賭してなにかを成し遂げること。

歴史上の人物たちも成してきたであろう、だけど一般人には体感しにくいその信念を、「薄ミュ」はストーリーと役者の熱い芝居から伝えてくれるように思う。

「命」と文字にしてしまうと、軽々しく見えてしまうかもしれない。

だが、「薄ミュ」はどのタイトルを観ても役者に一切の隙がなく、筆者にとっては否が応でも完成までに注ぎ込まれた圧倒的な熱量を感じ取ってしまう作品なのだ。

それはまさしく心血と呼べるものであり、劇中で描かれる登場人物たちの結末とシンクロし、観る者の心を深く抉るのである。

歴史ものにつきまとう重さを、繊細にときに無骨に、そして儚く描き出すのが、筆者の感じる薄ミュシリーズの大きな魅力のひとつだ。

作品の色に染まる、その作品のためだけに存在するヒロイン・雪村千鶴の存在

ここまでは戦う男たちにスポットをあててきたが、「薄ミュ」のメインはやはりヒロイン雪村千鶴と紡ぐ物語である。

「薄ミュ」シリーズでは、千鶴と新選組が出会う前の前日譚を描くミュージカル『薄桜鬼』黎明録 以外は、すべて千鶴が登場する。

そして、そのタイトルの主人公となっているキャラクターと千鶴との関係性が、激動の時代のなか、千鶴が背負うことになる過酷な運命とともに描かれていく。

特筆すべきは、1作品ごとに雪村千鶴のキャストが変わっている点だ。

歴代の千鶴を並べてみると、特別みんな似ているというわけではない。キャラクタービジュアルも、衣装や髪型のおかげで千鶴だと認識はできるものの、ひとつのビジュアルに寄せているというわけでもないように感じる。

これが、攻略ルート毎の上演という形をとっている「薄ミュ」にとって、大きな意味を持つのではないかと思っている。

筆者が歴代の作品を観てきて感じるのは、「このルートだから、こういうテイストの女優さんを起用したんだな」という強い納得感である。

明るくてあっけらかんとしているタイプ、一歩引くけど芯が強そうなタイプ、自分の色を消して相手の色に染まるタイプ……。

歴代の千鶴から感じるその内面は、実に様々である。

そして、その違いというのは、相手となるキャラクターやそれを演じる俳優によって生まれているのではないかと筆者は思っている。

そのキャラクターのために生まれた千鶴像は、当たり前だが、彼の隣にいるときにとてもしっくりくるのだ。

終盤、主人公と千鶴だけのシーンが登場する。そこで感じる、「そう! この2人が、こうやって並ぶ姿を観たかった!」という高揚感は、恋愛という要素が原作に組み込まれている作品ならではの感動である。

前半で述べたように、本シリーズは史実も絡めた骨太なストーリーが、全体を支える屋台骨として存在している。

それだけを切り取った無骨な作品も、それはそれで筆者は大好物であるが、「いやいや、まだ足りないでしょ!」と、愛の要素も濃く重ねがけしてくるのが「薄ミュ」という作品ではないだろうか。

主人公との恋愛という意味での愛に、親子の愛、同志への愛。そして極めつけは、役者・スタッフ陣から感じる原作への愛である。

血の匂いを感じながらも、深い愛に包まれることのできる「薄ミュ」だからこそ、これだけ長きに渡ってファンに愛されているのだろう。

舞台作品の面白さが濃縮されている、「薄ミュ」という唯一無二の存在

くどくどと語ってしまったが、「薄ミュ」は頭を空っぽにして観ても楽しめる、シンプルにエンターテイメントとして完成されている作品だ。

歌・ダンス・芝居・殺陣・新選組・鬼、そして恋愛。一度でこれだけ楽しめるのだから、とてもお得な作品といえる。

例えば歴史が苦手で、史実の流れに少し置いていかれようとも、観終わった後に素直に「なんだか圧巻された! 感動した!」と思ったら、少し新選組のことを調べてみようかな……という気持ちが湧くことだってあるかもしれない。

少しでも気になるキャラクター、キャストがいるなら、ぜひこれを機に「薄ミュ」に触れてみてほしい。

ちょうど2020年、新章を掲げた新作上演を記念して、過去作品が一挙配信されている。「薄ミュ」の暖簾をくぐるには、絶好のタイミングだ。

そして次の機会があれば、その際にはぜひ劇場だから体感できる、生の「薄ミュ」を味わってもらえたら、いちファンとして嬉しく思う。

ミュージカル『薄桜鬼』シリーズ アーカイブ配信詳細
▼配信作品▼
ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇
ミュージカル『薄桜鬼』沖田総司 篇
ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三 篇
ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE
ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇
ミュージカル『薄桜鬼』藤堂平助 篇
ミュージカル『薄桜鬼』黎明録
ミュージカル『薄桜鬼』新選組奇譚
ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE 2
ミュージカル『薄桜鬼』原田左之助 篇
ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇
ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇

▼配信サイト
■配信期間:2020年3月13日(金)~2020年6月30日(火)
・DMM.com https://www.dmm.com/digital/stage/
・dアニメストア(順次配信) https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/series_pc?seriesId=S0000633
・FOD(順次配信) https://fod.fujitv.co.jp/
・GYAO!ストア https://gyao.yahoo.co.jp/store
・MOVIEFULL http://m.mful.jp/
・music.jp https://music-book.jp/video/
・OnGenムービー http://sp.movie.ongen.net/
・Rakuten TV https://tv.rakuten.co.jp/series/124861/
・U-NEXT(順次配信) https://video.unext.jp/
・アニメ放題(順次配信) https://animehodai.my.Softbank.jp/lp/sp/alpha/spv/
・ビデオマーケット https://www.videomarket.jp/series/339
・ムービーフルPlus http://mfplus.jp/
・萌え動画がいっぱい http://moepai.jp/

■配信期間:2020年3月16日(月)~2020年6月30日(火)
・360Channel(順次配信) https://www.360ch.tv/category/12

■配信期間:2020年3月21日(土)~2020年4月1日(水)
・ニコニコ生放送 https://blog.nicovideo.jp/niconews/
各作品の配信開始日は配信サービスによって異なります。詳しくは、各配信サービスの公式サイトをご確認ください。

公演情報

タイトル

ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇

公演日程

【東京】
2020年4月2日(木)~5日(日)
明治座(特別公演)

【大阪】2020年4月9日(木)~12日(日)
サンケイホールブリーゼ

※全公演中止

キャスト

相馬主計:梅津瑞樹 雪村千鶴:松崎莉沙/
土方歳三:久保田秀敏 沖田総司:山﨑晶吾 斎藤一:大海将一郎 藤堂平助:樋口裕太 原田左之助:川上将大 永倉新八:岸本勇太 山南敬助:輝馬 山崎烝:椎名鯛造 近藤勇:井俣太良/風間千景:佐々木喜英 天霧九寿:横山真史 不知火匡:末野卓磨 雪村綱道:川本裕之 他

原作

オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)

演出・脚本

西田大輔

チケット情報

公式サイトを参照

公式HP

https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/

公式ブログ

http://m-hakuoki.jugem.jp/

公式ツイッター

@m_hakuoki

公演に関するお問い合わせ

https://www.marv.jp/support/st/

主催

ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

(c)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

WRITER

双海 しお
 
								双海 しお
							

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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