コラム

【前編】受け継がれし「薄ミュイズム」を紐解く。ミュージカル『薄桜鬼』シリーズの歴史を振り返る

2020年、新章を掲げ始動する予定だったミュージカル『薄桜鬼 真改』〜相馬主計 篇〜は、残念ながらプロジェクトの中止が発表された。

今回の発表に悲しい思いをしているファンも多いと思うが、現在同シリーズは様々な媒体で過去作品の一挙配信を実施している。

そこで今回は、これまで上演されてきた「薄ミュ」過去12作品の歴史を振り返ってみたい。

このコラム第1弾では、1作目から6作目をそれぞれの見どころとともに振り返る。

ネタバレは書いていないので、これから初めて過去作品のDVDや配信を観るという人も、作品を観る前の予習にぜひ活用してほしい。

ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇(2012年)

「薄ミュ」の初演は、ちょうど“2.5次元ブーム”が起き始めていた2012年。大人気女性向け恋愛ゲーム『薄桜鬼』原作のミュージカル版として大きな注目を浴びるなか、薄ミュの歴史の幕が上がった。

これまで「テニミュ」や特撮で活躍してきた若手俳優たちが脇を固めるなか、主演は本作が舞台初出演となる松田 凌。その後の薄ミュの歴史をみても、これほど挑戦的なキャスティングはないんじゃないだろうか。そう思うほど、異例の大抜擢であった。

脚本・演出は少年社中主宰の毛利亘宏が担当。また、本作はシリーズで唯一演劇ユニット30-DELUXとコラボした作品となっている。

毛利の演劇らしい演出に加え、30-DELUXメンバーによるコミカルなシーンも多い。現在の薄ミュのベースとなっている“芝居・歌・殺陣・ダンス”という要素は本作で確固たるものになっているが、さらに笑いの要素も散りばめているのが本作の特徴だ。

その後引き継がれていった“筋肉ダンス”こと「KINNIKU LOVE」が生まれたのもこの初演である。

この作品から数作続投したキャストも多く、シリーズのなかでももっとも“成長”というキーワードとともに楽しめるタイトルといえるだろう。ここからはじまり、キャスト陣がどうキャラクターや作品と向き合い、変わっていったのか。

そんなところに注目して初演から見返してみるのもおすすめである。

ミュージカル『薄桜鬼』沖田総司 篇(2013年)

廣瀬大介演じる沖田総司が主演の2作目。沖田ルートを語る上で欠かせない新選組局長近藤 勇(演:井俣太良)はこの作品から登場している。

初演には登場がなく、そこにいるものとして話が進んでいたが、やはりステージの上に近藤 勇の姿が実際にあるのとないのとでは、新選組という存在の重さが大きく違って感じられた。

近藤役を演じた井俣太良は、全キャストのなかで唯一、以降の全作品に出演し続けている。新章に位置づけられている2020年の最新作ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇にも、彼は局長としてキャスティングされていた。

薄ミュの歴史を大黒柱として支えてきた人物とあって、彼の続投は薄ミュファンにとっても座組にとっても大きな意味を持っていることは間違いない。

さて、「沖田総司 篇」に話を戻そう。

本作では病を患った、強くも儚い沖田の葛藤が描かれていく。新選組という命を賭して信念を貫くあり方と、病という命のタイムリミット。2つの角度から、より“命”について深堀りしている。

初演よりギャグシーンはぐっと減ったが、筋肉ダンスをはじめほっとできるコミカルなシーンは健在。

また、鈴木拡樹演じる南雲 薫が登場するのは、ライブ公演をのぞくと本作のみである。彼の女装シーンや雪村千鶴との演歌シーンなども、初見の人は楽しめるだろう。

本作のエンディングは、観客に想像の余地を残した幕引きにしているのが大きな特徴だ。このあと沖田と千鶴にはどんな未来が待っているのか。観終わったあと、2人の幸せを願うという贅沢な余韻を楽しめる作品に仕上がっている。

ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三 篇(2013年)

3作目にして満を持してという形で上演されたのが、この「土方歳三 篇」である。

アニメ版のストーリーも軸はこの土方ルートであり、そういう意味でも本作を集大成的な作品に感じているファンも多いかもしれない。

主演の土方を演じたのは、初演から続投している矢崎 広。矢崎はその後、グランドミュージカルでも活躍しており、当時も圧倒的な歌唱力で座組を引っ張っていた印象の役者だ。

シリーズ3作目ともなると、過去2作品を経て醸成された“薄ミュらしさ”が随所に散りばめられている。

そのなかでも本作は、唯一回想として物語が始まる構成となっているのが特徴的だ。

こういった積極的に挑戦する姿勢を貫きながらも、伝統を引き継いでいく。絶妙な新旧のバランス感が、シリーズを通して味わえる薄ミュの醍醐味なのではないだろうか。

初演から順を追って成長や進化を観ていくのも面白いが、アニメを知っている人はこの「土方歳三 篇」から観始めるのもストーリーが理解しやすくおすすめだ。

ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE(2014年)

シリーズ初のライブ公演。この公演には、1作目から3作目までの雪村千鶴を演じた吉田仁美・山本紗也加・菊地美香の3人が登場した。

女性向け恋愛ゲーム原作でヒロイン役を据えた作品の先駆けといえる薄ミュ。3人の千鶴役出演には、ヒロインへの強いこだわりが感じられる。

3人が一堂に会するこのライブ公演では、それぞれの千鶴の違いを感じられるだろう。

どの千鶴も千鶴には見えるのだが、性格や歌い方、隊士との接し方の違いなどを観ていると「このルートの千鶴はこの人しかいない」と思わせてくれるのだ。

本作はライブ公演なので、とにかくお祭りのノリで楽しんでもらいたいのだが、3人の千鶴に注目してみると発見があり面白いだろう。

2020年時点では、複数の千鶴役が同じ公演に出演したのはこの作品のみである。

ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇(2014年)


風間千景役の鈴木勝吾にとって初主演作となったのが、この作品。

この「風間千景 篇」を最後に、斎藤 一役の松田 凌や、土方歳三役の矢崎 広が卒業。そういった意味では、ひとつの区切りの作品ともいえる。

これまで新選組キャラクターのルートが描かれてきたが、本編4作目にして鬼の頭領・風間千景ルートが描かれていく。

そのストーリーは過去3作品とは大きく違っており、甘さは控えめ。恋愛というよりも、生き様というものが際立つ作風となっている。

また、風間ルートは、作品タイトルの「薄桜鬼」の意味が語られるルートでもある。原作未プレイで観る人にとっては、そのシーンで「そういうことか」と興奮が得られるかもしれない。

ミュージカル『薄桜鬼』藤堂平助 篇 (2015年)

「風間千景 篇」に続き、初演から出演してきた藤堂平助役の池田純矢が主演を務めた本作。

この作品では、沖田役の廣瀬大介や永倉新八役の宮崎秋人、風間役の鈴木勝吾、山南敬助役の味方良介らが続投する一方、橋本祥平や井澤勇貴といった新たな風が吹き込んだ作品だ。

確立されてきた薄ミュの世界が、受け継がれていくフェーズに入ったことを強く実感させるキャスティングとなっている。

前作の「風間千景 篇」と打って変わって、主人公の藤堂平助と千鶴の、過酷ながらも明るい関係性が本作の大きな魅力だろう。

平助の気さくな人柄も手伝って、最初からわりと賑やかな雰囲気の2人。他のルートに比べて“動”を感じさせる2人が作り上げる関係は、過去の作品とはまた一味違っている。

原作ストーリーの面白さを最大限に活かす柔軟性と、“薄ミュ”としての歴史の積み重ね

初演から6作品をおさらいしてきた。ネタバレは避けているので、ストーリーの顛末には触れていないが、それぞれに独立した面白さが詰め込まれていることは感じてもらえただろうか。

「薄ミュ」という括りの中に実にバラエティに富む展開が待っている。これは、原作ゲームのシナリオがそれだけ面白いということであり、同時にそれを3時間弱にストーリーをまとめあげた作り手のこだわりの結晶であることも意味する。

激動の時代を描くミュージカル『薄桜鬼』もまた、2.5次元作品ブームという荒波のなか、成長し進化を続けてきた。

令和の時代にまたひとつ、新たな試みに挑むミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇は、上演こそ叶わなかったものの、紛れもなくこの歩みを止めない「薄ミュイズム」を受け継いだ作品といえるものだっただろう。

もともと本作の観劇予定があったという人もなかったという人も、これを機にシリーズ過去作品の配信を観てみてはどうだろうか。新たな沼への一歩となるかもしれない。

ミュージカル『薄桜鬼』シリーズ アーカイブ配信詳細
▼配信作品▼
ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇
ミュージカル『薄桜鬼』沖田総司 篇
ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三 篇
ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE
ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇
ミュージカル『薄桜鬼』藤堂平助 篇
ミュージカル『薄桜鬼』黎明録
ミュージカル『薄桜鬼』新選組奇譚
ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE 2
ミュージカル『薄桜鬼』原田左之助 篇
ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇
ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇

▼配信サイト
■配信期間:2020年3月13日(金)~2020年6月30日(火)
・DMM.com https://www.dmm.com/digital/stage/
・dアニメストア(順次配信) https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/series_pc?seriesId=S0000633
・FOD(順次配信) https://fod.fujitv.co.jp/
・GYAO!ストア https://gyao.yahoo.co.jp/store
・MOVIEFULL http://m.mful.jp/
・music.jp https://music-book.jp/video/
・OnGenムービー http://sp.movie.ongen.net/
・Rakuten TV https://tv.rakuten.co.jp/series/124861/
・U-NEXT(順次配信) https://video.unext.jp/
・アニメ放題(順次配信) https://animehodai.my.Softbank.jp/lp/sp/alpha/spv/
・ビデオマーケット https://www.videomarket.jp/series/339
・ムービーフルPlus http://mfplus.jp/
・萌え動画がいっぱい http://moepai.jp/

■配信期間:2020年3月16日(月)~2020年6月30日(火)
・360Channel(順次配信) https://www.360ch.tv/category/12

■配信期間:2020年3月21日(土)~2020年4月1日(水)
・ニコニコ生放送 https://blog.nicovideo.jp/niconews/
各作品の配信開始日は配信サービスによって異なります。詳しくは、各配信サービスの公式サイトをご確認ください。

公演情報

タイトル

ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇

公演日程

【東京】
2020年4月2日(木)~5日(日)
明治座(特別公演)

【大阪】2020年4月9日(木)~12日(日)
サンケイホールブリーゼ

※全公演中止

キャスト

相馬主計:梅津瑞樹 雪村千鶴:松崎莉沙/
土方歳三:久保田秀敏 沖田総司:山﨑晶吾 斎藤一:大海将一郎 藤堂平助:樋口裕太 原田左之助:川上将大 永倉新八:岸本勇太 山南敬助:輝馬 山崎烝:椎名鯛造 近藤勇:井俣太良/風間千景:佐々木喜英 天霧九寿:横山真史 不知火匡:末野卓磨 雪村綱道:川本裕之 他

原作

オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)

演出・脚本

西田大輔

チケット情報

公式サイトを参照

公式HP

https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/

公式ブログ

http://m-hakuoki.jugem.jp/

公式ツイッター

@m_hakuoki

公演に関するお問い合わせ

https://www.marv.jp/support/st/

主催

ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

(c)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

WRITER

双海 しお
 
								双海 しお
							

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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