コラム

【エーステ初心者向け】いくつもの“はじまり”を描く「春組」劇団員の魅力を徹底解説

観る度に、カントクの心に満開の花を咲かせてくれるMANKAI STAGE『A3!』、通称「エーステ」。

原作人気・俳優人気ともに高く、公演を重ねる毎にその面白さが新しいエーステファンを劇場に呼び、チケット激戦舞台のひとつに数えられる人気作品である。

観たことはなくとも、その名前を知っている人も多いだろう。またこれまで原作アプリや舞台には興味はなかったが、2020年からスタートしたアニメ版を観て「A3!」という作品に興味を持ち始めた人もいるかもしれない。

今回の企画記事では、エーステ初心者に向けて各組の魅力を解説していきたい。

記念すべき第1弾は、やはりどの組よりも“はじまり”という言葉が似合うこの組――春組からスタートしよう。

春組メンバー紹介~MANKAIカンパニー再建の最初の一歩を踏み出した5人

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まずは春組の劇団員たちを見てみよう。

<春組>
佐久間咲也(演:横田龍儀)
碓氷真澄(演:牧島 輝)
皆木 綴(演:前川優希)
茅ヶ崎至(演:立石俊樹)
シトロン(演:古谷大和)

カントクのもと劇団員0人からリスタートを切ったMANKAIカンパニーに、なぜこの5人がやってきたのか。どうして演劇初心者の彼らが、舞台に立とうと思うに至ったのか。

春組が出来るところから、素人だらけの旗揚げ公演を成功させるまで。これを描いているのが、2018年に上演されたエーステ初演にあたるMANKAI STAGE『A3!』~SPRING & SUMMER 2018~である。

実は、演技経験者がいない組はこの春組だけ。そんな5人が、“劇団”の看板を掲げて、チケット代をもらって、芝居をしなくてはならない。

冷静に考えると無理ゲーのようなことに挑んでいくのが、「A3!」という作品の“はじまり”を担う春組なのだ。

初心者の集まりのなかで、人一倍「お芝居をしたい!」という演劇への熱意を持っている人物が、春組リーダーの佐久間咲也。芝居への情熱はピカイチなのだが、いざ台詞を読むと「大根」と評されてしまう。

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舞台版では、横田の“芝居がうまくない”演技が序盤に登場する。誰が観ても“うまくない”と思ってしまう演技とはどういうものか。それをリアルに役者が観せてくれる作品はなかなかない。

観ていると、思わず心の底から「頑張れ! 咲也頑張れ!」と応援してしまう。そうして、気づくと、劇場に来たいち観客から“MANKAIカンパニーのファン”へと、観客の立場が塗り替わっているのである。

いつしか、いつでも一生懸命で元気でまっすぐな咲也が、劇団の軸となっていく。小さな芽から、大きな幹へと育っていく。

春組のなかでも、つねに“成長”というキーワードとともに、カントク=観客に演劇の楽しさを教えてくれるのが春組リーダー・咲也なのだ。

春組の魅力①シトルンのコントが生み出す軽快なテンポ

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「一緒に同じゴールを目指して走っていこうよ!」と横並びでみんなを鼓舞するタイプのリーダー咲也。

そんなリーダーとともに春組を支えているのが、劇団の脚本家も担当している皆木綴だ。

根っからのお兄ちゃん気質で、ついつい要らぬ苦労を買ってしまうこともあるお人好し。そしてなにより、彼はエーステきっての敏腕ツッコミ劇団員である。

2020年2月現在、劇団員では唯一全公演に出演しているのが、皆木綴役の前川優希だ。そして綴は毎回、倒れる寸前まで根を詰めながら脚本を書き上げ、最高の劇団公演をこの世に生み出している。

春組メインではない公演に出ても、彼はツッコミ役として大忙しなのだが、やはり一番忙しそうなのはシトロンと一緒にいるときだろう。

シトロンと綴が、2019年上演のMANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~(通称「春単独」公演)で観せた、「シトルン」の漫才パート。ここでは綴のツッコミが冴え渡っていた。

それでなくても、日常生活からシトロンの言い間違いと、それに対する綴のツッコミで、会話がコントのようになる春組。これはこの組の大きな魅力のひとつといえるだろう。

シトロンの異国からきた謎めいた留学生というどこかファンタジーな要素は、やりすぎてしまうとシラけてしまいかねない難しい設定だ。

そこを古谷が、ミステリアス・コミカル・シリアスを絶妙なバランス感覚で組み立て、さらにお人好し大学生というリアルな役どころの綴が組み合わさり、全体としてちょうどいい均衡を保っている。

春組の持つコント的な面白さは、メインストーリーが進んだ先で待ち受けている“重さ”への布石ともいえるもの。

春組を観るときには、その軽快なやりとりを存分に楽しむことをおすすめする。

春組の魅力②春組を通してみえてくる演劇の醍醐味

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入団当初、芝居の優先度が低く、他の目的のために春組のメンバーとなったのが、碓氷真澄と茅ヶ崎 至だ。

そんな2人の魅力がつまっているのが、「春単独」公演で上演された劇中劇『不思議の国の青年アリス』である。

真澄が主演、至が準主演を務めた作品だ。

「A3!」では、主演や準主演を務めるにあたって、その劇団員の抱える苦悩や過去がカギとなっていく。内側に溜め込んだもやもやに対して、向き合って、乗り越えていかなくてはならないのだ。

『不思議の国の青年アリス』では、はやく大人になりたい真澄と、大人として振る舞うことを求められる至が、童話をモチーフとしたファンシーな世界のなかで“大人になることとは”という問いに答えをだしていく。

自身のなかにある悩みや壁と向き合いながら、同時に彼らは芝居を楽しむことを少しずつ分かりはじめるのだが、第1回公演の劇中劇『ロミオとジュリアス』と比べてみるととてもおもしろい。

旗揚げ公演もこの公演なりに、当時彼らは真剣に作品に向き合っている。しかし、第2回公演では、さらに深いところで芝居を楽しもうとするのだ。

全員が素人だからこそ、演劇の面白さに目覚めていく姿も段階的に描かれていく。

これはきっと初めて舞台を観る人もそうだろう。初回よりも2回目、2回目よりも3回目……。芝居に触れれば触れるほど、感受性のアンテナが広がっていく。

春組のみんなもそうなのだ。だからこそ、初めて舞台に触れる人、2.5次元作品に触れる人にこそ、“はじまり”を合言葉にした彼ら春組の物語を観てもらいたいと思ってしまう。

咲き誇る花の香りを感じて、ブルブルブルーミング!

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原作のストーリーも、舞台も、春組ははじまりの物語を担っている。MANKAIカンパニーにとっての”初めて”がつまった春組の軌跡は、まさに“はじめてのエーステ”にぴったりの内容といえる。

たくさん笑えて、どこまでもまっすぐで、春の陽射しのような元気をくれる。それがエーステの春組なのだ。

WRITER

双海 しお
 
								双海 しお
							

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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