コラム

「我が人生に悔いなし」ペダステで切り開かれた、衣食住より大事な世界|わたしの沼落ち物語 vol.5 水川ひかる

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気が付けば、連日劇場に足を運んでいた。気が付けば、チケット戦争に参戦していた。気が付けば、推しのSNSを見て胸をときめかせていた。他にも他にも、etc。

こうした「気が付けば」がいくつも重なり、2.5次元沼にどっぷりと浸かってしまったという人も少なくないだろう昨今。かくいう筆者も、その一人である。

生きていくために必要なのは衣食住、そして推しが立つ舞台。むしろ衣食住より舞台が大事かもしれない。胸を張ってそう言えてしまうほど、現在の私は2.5次元沼に沈んでいる。

“気が付けばこうなっていた”という意識が強いが、やはり物事には始まりというものがあるのだと思う。

さて、私の始まりは何だろう。そう振り返った時、脳裏に真っ先に浮かんだのは舞台『弱虫ペダル』、通称「ペダステ」であった。

沼の底への、第一歩

私が初めてペダステの話題を耳にしたのは、今からおよそ6年前のことだ。

周りの友人達がしきりに「ペダステはやばいぞ」と語るが、何が“やばい”のか全くわからないという少々異様な空気を感じながら、私はおそるおそる次回公演「舞台弱虫ペダル インターハイ篇 The Second Order」の情報を検索した。そして飛び込んできたビジュアルに、思わず叫びそうになったことを今でも覚えている。

「ロードバイク、ハンドルしかないんかーい!?!??!!?」

今ではすっかりお馴染みであろうあのハンドルだけで走るスタイルは、当時の私に相当な衝撃を与えた。

確かに舞台上でロードバイクを乗り回すわけにはいかないもんな……いやでも、果たしてこれはロードバイクに乗っているように見えるのか? そもそもキャラクターの再現性に違和感はないのだろうか? ビジュアルは抜群にいいけども…等々。

当時の私の中に数々の疑問が浮かび上がったが、今になって思い返してみればそれは、ある種の自己防衛であったかもしれない。これは油断するとハマるぞ気をつけろと、脳裏で警鐘が鳴っていたのだ。

一度気になってしまえば、その正体を見ないことには気が済まないというのが昔からの性分である私は、“気が付けば”チケットの申し込みをしていた。

ちなみに当時の私は九州在住、一番近場での公演は大阪。観劇のために海を越えようという時点で、私は既にペダステに惹かれていたのだろう。思い返せばもうこの時から既に、半ば無意識に沼への片足を突っ込んでいたというわけである。

いざ、始まりの地へ――シアターBRAVA!

観劇のために奮闘すること約3ヶ月、私が足を運んだのは、大阪のシアターBRAVA!である。(今はすでに閉館してしまっている。たくさんの思い出をありがとうございました!)

チケット戦争の洗礼を受けながら何とか友人と自分の分のチケットを手に入れた私は、ペダステへの並々ならぬ期待を寄せて劇場へと足を運んだ。

――そして、舞台の幕が上がる。

静かな劇場に響くママチャリのベルの音。聞き慣れた音のはずなのに、なぜか鳥肌が立って止まらなかったという記憶は未だに鮮明だ。

オープニングで並ぶ選手達の姿は、まるで原作からそのまま飛び出してきたかのように圧倒的なビジュアルを誇って目の前で輝いていた。見ているこちらも思わず汗が流れそうになるペダリングは圧倒的で、そこには、確かにロードバイクが存在していた。

瞬く間にシアターBRAVA!はインターハイ2日目の会場となり、私たちは、インターハイの熱い戦いを見守る観客となったのだ。

最後のひと押しは、推しだった。

この世界にハマったら、きっともう引き返せなくなる――何とか耐えなければ……! そんな矜持を抱いてギリギリのところで踏み止まっていた私の背中を押したのは、推しキャラ御堂筋翔(演:村田充)の存在であった。

御堂筋くんと言えば人間離れした風貌、不気味なまでにすらりと伸びた手足、そして他の誰にも出せない圧倒的な雰囲気を纏って主人公達の前に立ちはだかるライバルキャラクターである。

「さすがに御堂筋くんを再現するのは無理でしょ!?」とこれまた自己防衛的な考えを抱いて臨んだ私は、瞬く間にペダステの舞台で輝く御堂筋くんの魅力に平伏した。

御堂筋くんがいたのだ、そこには。

想像の遥か上をいく推しキャラの登場に後頭部を殴られたような衝撃を覚えた私は、最初から最後までずっと、舞台上で繰り広げられる熱い戦いに心を奪われっぱなしでいた。

「次の舞台も、絶対に観に来ます……」

観劇を終えた私は、そう友人に語るだけで精一杯だった。周りの友人達が軒並み「ペダステはやばい」としか言っていなかった理由が、観劇後に少しだけわかった気がした。

人はあまりにも圧倒的な世界を目の前にすると、持ち得る語彙の全てを忘却してしまうらしい。こうして今振り返っている間も、気を抜けばやばいという単語を連呼してしまいそうになる己の未熟さがもどかしい。

何年経っても、ペダステの魅力を語り尽くせるほどの言葉が見つからないのだ。私を2.5次元沼に引きずり込んだペダステは、それほどまでに素晴らしい世界なのだということが、どうかこの記事を読んで下さっている方に伝われば幸いである。

愛と誇りを持って伝えたい、「2.5次元はいいぞ!」

こうして目の前で繰り広げられる数多の名勝負に、私は2.5次元の世界に見事に落ちていた。きっと私のように、大好きな原作の世界が目の前で再現されたことに対して感謝や興奮を覚え、沼落ちをした仲間も多いだろう。

じわじわではなく、どぼん。私が2.5次元にハマった効果音は、間違いなくそれだ。

一歩踏み出せばそれが最後、頭のてっぺんまで決して逃れられない世界の魅力に沈んでしまっていた。これぞ沼。まさしく沼。底なし沼に落ちてしまったのだと潔く認めた私の素直な感想は、――「我が人生に悔いなし」この一言に尽きる。

余談ではあるが、筆者はペダステと出会いロードバイク購入に至り、地元の大会で入賞を果たした。ペダステに心の栄養を与えてもらっただけでなく、体まで鍛えてもらったのだ。心身共に健康になれる舞台、それがペダステ。それが2.5次元。

この眩しい世界が存在し続けてくれる限り、私の人生は安泰だ。そう胸を張って言える世界に出会えたことは、私の人生における財産でもある。

これからもきっと私は何度も2.5次元舞台に心を奪われ、救われて生きていくのだろう。少し大袈裟かもしれないが、これは予想ではなく、確信だ。レッツ沼落ち。貴方も、煌めく世界を覗いてみませんか?

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WRITER

水川ひかる
								水川ひかる
							

2.5次元舞台の魅力を全力でお伝えしていきたいと思います。まだまだ駆け出しライター。推しが元気で今日もごはんが美味い!

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