コラム

職人肌の鯨井康介、ストイック魂でファンのハート射抜く

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2.5次元作品を追っていると、「この役者さんがいるなら間違いない、安心して楽しめそう」という絶対的な信頼を寄せる役者ができてくる。

運悪く、その作品の脚本や演出、解釈、他のキャストの演技との相性があまり良くなかったとしても、とにかくその信頼している役者のシーンは面白く感じられたりする。

ときには、その人の演技だけでマイナスに感じた要素も帳消しにして、作品自体にプラスの印象を持つこともある。

今回は筆者がそんな信頼を一方的に寄せている役者・鯨井康介についてその魅力をまとめてみた。

芝居への愛が垣間見えた「テニミュ」


鯨井康介が舞台の世界で注目を浴びたのはミュージカル「テニスの王子様」である。

筆者もこの作品で彼の演技を初めて観た。

2代目海堂薫役として出演した当時、彼はまだ17歳。

共演者は年上が多いなか、彼の海堂薫は引けを取らない存在感と、同時に10代の彼だから出せるフレッシュさも醸し出していた。

17歳とは思えない堂々たる風格をみせていた彼だが、彼の経歴を知るとそれも納得する。

鯨井は4歳から日本舞踏を始め、テニミュ出演以前に日本舞踏の世界で舞台に立ったことがある。

さらに、中学生時代にも劇団に所属し、その劇団の公演にも定期的に出演していた。

これらの経歴からも感じる「芝居が好き」という彼の情熱を、ステージ上から受け取ったことがある観客も多いのではないだろうか。

テニミュで鯨井が演じた海堂薫は、“マムシ”と呼ばれるストイックな役どころだ。

それを表現するため、劇中でも試合の前からステージ上をダッシュしていたり、ハードな筋トレをしたりといったシーンが登場する。

観ているだけで息が上がりそうなシーンを淡々とこなし、汗を垂れ流しながらマムシのごとく対戦相手を見据える眼光は、同時にたくさんのファンのハートも射ぬいただろう。

青学2代目卒業と同時に鯨井も卒業したが、その後、急遽次回作に続投しなくてはならないアクシデントが起こった。

稽古期間はほんの10日程度。

どう足掻いても時間が足りないなか、たくさんのプレッシャーを背負いながら堂々とステージに海堂薫として立った彼の役者としての底力に、心打たれたファンは多いだろう。

時間が足りないなかでも決して妥協しない、高いクオリティのものを届ける。

役者としての覚悟や芝居に、観客や役者仲間から厚い信頼が寄せられるのも当然かもしれない。

かわいい後輩として可愛がられる「鉄ミュ」


次に紹介したいのはミュージカル「青春-AOHARU-鉄道」だ。

鯨井は、ブラコン気味な東海道本線役を演じている。

鉄ミュにはテニミュ初期のキャストが多数出演しており、テニミュファンにとってはそれだけでどこを観ても楽しい作品なのだが、2015年からシリーズが続いているのは溢れ出るほどの原作への愛があるからだろう。

この作品では、キャスト陣のコミカルな一面が堪能できる。

とにかくテンポの良さが求められる作品で、濃いキャラクターたちの織りなす阿吽の呼吸が、作品の面白さへと繋がっている。

筆者のこの作品での一押しポイントは、中堅ともいえる立場になった鯨井が先輩陣に可愛がられている姿をみられる点だ。

若い世代が多く出演する2.5次元作品に出ると、やはり鯨井は実力も経歴もともにベテランの部類となる。

しかし、2.5次元作品ながら鯨井よりも先輩にあたるキャスト陣が多く名を連ねるこの鉄ミュは、鯨井がとにかく可愛がられるのだ。

初めて出会った頃、まだ鯨井が10代だったことも影響しているのかもしれないが、先輩たちに囲まれて和気あいあいとしている姿は微笑ましい。

ステージ上ではその演技力の高さに目を奪われがちだが、役から離れた瞬間の“くじらちゃん”スマイルも彼の大きな魅力のひとつといえるだろう。

キャプテンの熱さがハマり役の「ペダステ」

鯨井康介の熱さを存分に感じられる2.5次元作品といえば、舞台「弱虫ペダル」ではないだろうか。

主人公・小野田坂道の1つ上の学年で、3年生になってからは総北高校の主将を務める手嶋純太役を演じている。

自らを凡人と称するキャラクターだが、勝つために策をめぐらせ、貪欲に努力することができるという才能を持つ人物。

とくに主将になってからは、チームメンバーの面倒を見ながら、勝利を目指す姿が印象的である。

手嶋が熱くなるシーンでは、このキャラクターに眠る熱さと鯨井自身のもつ熱量が呼応し、劇場を飲み込むほど大きな熱になっていくのを体感できる。

この手嶋もそうだが、鯨井はストイックなキャラクターを演じることが多い。

それだけ、彼自身が芝居に対してストイックに向き合う部分を持っているからなのだろう。

その熱は、DVDや配信もいいが、ぜひ生で体感してほしい。

真摯な芝居で観客の視線を奪う職人肌の役者・鯨井康介

7月20日で32歳の誕生日を迎える鯨井康介。

彼は2.5次元作品にも、そうでない舞台作品にも多数出演している。

原作のない作品では、彼のまた違った持ち味がみえてくるので、2.5次元作品から彼を知ったという人もぜひそれ以外の作品に足を運んでみて欲しい。

彼の芝居への信頼度がグッと増すことは、間違いないだろう。

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WRITER

双海 しお
 
								双海 しお
							

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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